公開時間:2024-01-26 18:21
● 「中華人民共和国専利法実施細則」の改正に関する決定が公布
2023年12月11日に、国務院は「中華人民共和国専利法実施細則」の改正に関する決定を公布しました。改正後の「中華人民共和国専利法実施細則」は2024年1月20日より施行されています。
改正後の専利法実施細則は合計13章149条があり、具体的な改正内容は主に下記の5つに関連しています。
1、専利出願制度を整備し、出願人とイノベーション主体に便利を提供する。
専利出願プロセスの最適化、部分意匠制度の細分化、新規性喪失の例外規定の緩和、優先権関連制度の整備などを含む。
2、専利審査制度を整備し、専利審査の品質と効率を高める。
専利出願行為の規範化、実用新案及び意匠の審査制度の整備、遅延審査制度の増加、専利復審制度の整備などを含む。
3、特許行政保護を強化し、専利権者の合法的権益を保護する。
特許権存続期間の補償制度の細分化、専利紛争処理及び調停制度の整備、全国で重大な影響を及ぼす専利権侵害紛争の定義基準の明確化などを含む。
4、専利の公共サービスを強化し、専利の転化・運用を促進する。
強制代理例外規定の増加、専利情報公共サービス能力の向上、ライセンス開放制度の細分化、職務発明に関する規定の整備などを含む。
5、国際規則とのつながりを強め、高レベルの対外開放を推進する。
意匠国際出願の法的地位及び審査手続を明確にし、優先権要求、新規性喪失の例外規定、分割出願などと中国の意匠出願制度とのつながりを規定することなどを含む。
改正後の細則をスムーズに施行させるために、国家知識産権局は同時に「専利審査指南」及び「改正後の専利法及びその実施細則の施行に係る審査業務対応に関する臨時的措置の公告」などの4つの関連部門の規定及び規範的文書の作成・改正を完了し、これらの関連制度は専利法実施細則と同時に発効して施行されています。
● 専利法第42条第2項に基づく特許権存続期間の補償について
専利法第42条第2項では、特許出願日から満4年、且つ実体審査請求日から起算して満3年後に特許権が付与された場合、国務院専利行政部門が、特許権者の請求に応じて、特許権付与プロセスにおける不合理的な遅延に対して特許権存続期間の補償を与えることが規定されています。専利法実施細則第77条~第79条及び第84条は、それぞれ特許権存続期間補償の請求時期、計算方法、合理的な遅延及び出願人による不合理な遅延について規定を定めています。審査指南第5部第9章では、専利法および専利法実施規則の関連規定についての詳細な説明を記載した第2節が特に追加されています。
1、請求の提出について
特許権者は、特許授付与公告日から3か月以内に専利局へ請求を提出し、規定された費用を納付しなければなりません。特許権存続期間の補償は、特許権者からの請求に応じて行うものであり、請求がなければ補償は与えられません。
2、補償期間の確定について
専利法実施規則第78条の規定によると、専利法第42条第2項の規定に従って特許権存続期間の補償を与える場合、補償期間は、特許権付与プロセスにおいて不合理的に遅延した実際の日数に応じて計算されます。補償期間の計算式は以下のとおりです。
特許権補償期間 = (Ⅾ権利付与日-Ⅾ満4年満3年の日)-T合理-T不合理(出願人)
そのうち、Ⅾ権利付与日とは、特許権の付与が公告された日を指します。
Ⅾ満4年満3年の日とは、特許出願日から4年経過した日及び実体審査請求日から3年経過した日のうちのいずれか遅い日を指します。
T合理とは、権利帰属紛争や財産保全に起因した審査プロセスの中止による遅延などの合理的な遅延の日数を指します。
T不合理(出願人)とは、指定期限の延長要求や審査の遅延要求で遅延した時間などを含む出願人による不合理な遅延の日数を指します。
そのうち、「実体審査請求日」とは、出願人が実体審査請求をし、且つ特許実体審査請求料を全額納付した日を指します。出願人が出願と同時に実体審査請求料を納付するなどすれば、実体審査請求日は発明の公開日よりも早い場合があります。特許出願が公開されていなければ実体審査に入ることができないため、実体審査請求日から特許出願公開日までの期間を特許権の補償期間に算入することは明らかに不合理です。従って、実体審査請求日が公開日よりも早い場合は、「実体審査請求日から起算して満3年」、即ち、式中の「満3年」は、出願の公開日から起算されます。
PCT出願の場合は、PCT出願が中国国内段階に移行した日を出願日とし、分割出願の場合は、分割出願の提出日を出願日として特許権の補償期間を計算します。
(1)権利付与プロセスにおける合理的な遅延について
権利付与プロセスにおける合理的な遅延は、特許出願書類を補正した後に特許権を付与された場合の特許復審手続き、権利帰属紛争や人民法院の保全裁定執行への協力による関連手続きの中止、および行政訴訟による遅延を含みます。
(2)出願人による不合理的な遅延について
専利法実施細則第79条の規定によれば、出願人による不合理的な遅延には以下が含まれます。
ア、指定期限の延長を請求して指定期限内に専利局の通知に応答しなかった場合、遅延時間は、期限満了日から応答書類の実際の提出日までとする。
イ、遅延審査を申請した場合、遅延時間は実際に審査を遅延した時間とする。
ウ、援引加入による遅延の場合、遅延時間は追加で申請書類を提出する時間とする。
エ、権利回復の請求による遅延時間は、遅延が専利局によるものであることを証明できた場合を除き、当初の期限満了日から権利回復承認通知書の発行日までとする。
オ、優先日から30か月以内に中国国内段階へ移行手続きをしたが早期処理を要求しなかった国際出願の場合、遅延時間は中国国内段階への移行日から優先日よりの30か月満了日までとする。
(3)同日特実併願における特許権の存続期間の補償について
同日特実併願における特許権に存続期間の補償は与えられません。同一の出願人が同日に同一の発明創造について実用新案出願及び特許出願の両方を提出し、且つ専利法実施細則第47条第4項の規定により特許権を取得した場合、権者が比較的に早い実用新案権の権利付与公告日から権利を主張できるため、特許権の存続期間については補償を与えません。
● 医薬品特許権の存続期間の補償について
専利法第42条第3項は、新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するために、中国で発売許可を得られた新薬に関連する特許について、国務院専利行政部門は権者の請求に応じて特許権存続期間の補償を与え、補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の特許権存続期間は合計14年を超えないものとすることを規定しています。
専利法実施細則第80条~第84条及び審査指南には、補償条件等について詳細な規定が定められています。審査指南第5部第9章に、専利法及び専利法実施細則の関連規定を詳しく解説する第3節が追加されています。
1、医薬品特許権の存続期間に対する補償請求の要件について
医薬品特許権存続期間の補償を請求する際に満たすべき条件は以下のとおりです。
(1)補償請求に係わった特許の権利付与公告日は、医薬品販売承認申請が承認された日よりも早い。
(2)補償請求時に、特許権は依然として有効である。
(3)特許は薬品特許権の存続期間の補償を受けていない。
(4)補償請求に係わった特許の請求項には、販売を承認された新薬に関連した技術案が含まれている。
(5)1つの医薬品について同時に複数の特許が存在している場合、特許権者はそのうちの1つの特許のみに対して医薬品特許権存続期間の補償を請求することができる。
(6)1件の特許が同時に複数の医薬品に係わった場合、医薬品特許権存続期間の補償請求は、1つの医薬品のみに対して行うことができる。
2、請求人、請求の提出及び証明資料について
(1)請求人及び請求時間について
医薬品特許権存続期間の補償請求は特許権者が行うべきです。特許権者と医薬品販売承認取得者が一致しない場合、特許権者は、補償請求を行う際に医薬品販売承認取得者の書面による同意を得なければなりません。
特許権者は、医薬品販売承認申請が承認された日から3か月以内に専利局へ補償請求を提出し、規定された費用を納付する必要があります。条件付き販売承認を取得した医薬品の場合、医薬品特許権の補償期間は、正式な販売承認を取得した日ではなく、条件付き販売承認を取得した日に基づいて計算されます。
(2)補償請求の提出および証明資料について
医薬品特許権存続期間の補償を請求する場合、特許権者は、申請書及び必要な証明書類を提出し、且つ提供した書類・資料が真実で有効であることを保証しなければなりません。
3、存続期間補償の対象となる「新薬」の範囲について
審査指南第5部第9章第3.4節の規定によると、国務院医薬品監督管理部門が販売を承認した革新的医薬品および改良型新薬の薬物活性物質についての製品特許、製造方法特許または医療用途特許に対して、存続期間の補償を与えることができます。
(1)存続期間補償の対象となる新薬の範囲について
期間補償を認められた改良型新薬は以下の5種類に限定されます。
ア、化学薬品第2.1類における既知の活性成分をエステル化しまたは既知の活性成分を塩化した薬品。
イ、化学薬品第2.4類、即ち、既知の活性成分を含む新適応症の薬品。
ウ、予防的生物学的製品第2.2類におけるワクチンウイルス株から改変されたワクチン。
エ、治療用生物学的製剤第2.2類における新適応症を追加された生物由来製品。
オ、漢方薬第2.3類、すなわち、機能を追加された漢方薬。
(2)新薬活性物質に係わった特許について
審査指南の関連規定によれば、「規定に合致した新薬」については、医薬品活性物質の製品特許、製造方法特許又は医薬用途特許に対して、医薬品特許権存続期間の補償を与えることができます。特許権者は、販売を承認された上記「規定に合致した新薬」の活性物質に係わった特許について医薬品特許権存続期間の補償を請求できることが明確化されています。
4、指定した請求項に新薬に関する技術案が含まれるかどうかについての審査
医薬品特許権存続期間の補償制度は、特許の有効期間内に新薬販売の審査・承認にかかった時間を補償することを目的としているため、販売が承認された「新薬」は、医薬品特許権存続期間補償請求の対象となる医薬品特許権とは直接的な関係を持たなければなりません。ここでは、「新薬に関する技術案」は、販売される新薬(活性物質)と補償請求をした医薬品特許とを結ぶ「架け橋」となります。審査官は、特許権者が指定した特許請求項には新薬に関する技術案が含まれているかどうかを確認する必要があり、これが医薬品特許権存続期間の補償が認められるかどうかを決めるための前提条件となります。
5、医薬品特許権の補償時間の計算及び補償期間の特許範囲について
専利法第42条第3項の規定により、中国で販売が承認された新薬に係る特許に対して存続期間の補償が行われます。専利法第42条第3項及び専利法実施細則第82条の規定によると、医薬品特許権の補償期間の計算式は以下のとおりです。
医薬品特許権の補償期間=D医薬品販売承認日-D出願日-5(≦5年)
特許有効期間の合計=(D20年満了日-D医薬品販売承認日)+特許権の補償期間+医薬品特許権の補償期間(≦14年)
医薬品特許権の補償期間には二重の制限があり、第一に、医薬品特許権の補償期間は5年を超えないものとし、第二に、新薬の販売が承認された後の特許権有効期間の合計は14年を超えないものとされています。
補償理由が異なるため、特許権存続期間の補償と医薬品特許権存続期間の補償を加算することができます。ただし、医薬品特許権の補償期間は、国家薬品監督管理局が販売を承認した新薬と承認した適応症に関連する技術案に限定されており、医薬品特許権の補償期間には、補償期間が5年以内であり、新薬の販売が承認された後の特許有効特許期間の合計は14年を超えてはならないという制限があります。従って、まずは特許権の補償期間を計算し、次に医薬品特許権の補償期間を計算する必要があります。
● 特許権存続期間の補償と専利ライセンス開放制度に関する行政再議事項に関する公告
改正後の専利法及びその実施細則に増加された特許権存続期間の補償、専利ライセンス開放などの重要な制度をスムーズに施行させるために、国家知識産権局は、特許権存続期間の補償と専利ライセンス開放制度に関する行政再議事項について下記のことを公告し、2024年1月20日より施行されています。
1、専利権者、関連専利について専利権侵害紛争を有している利害関係者、または関連医薬品登録申請を提出した利害関係者は、国家知識産権局の専利法第42条第2、3項に基づいた特許権存続期間の補償の有無に関する決定に不服する場合、国家知識産権局に行政再議を申請することができる。
2、専利権者は、国家知識産権局が専利法第51条第2項に基づいて下した専利ライセンス開放の実施期間中に年金減免を行うか否かに関する決定に不服する場合、国家知識産権局に行政再議を申請することができる。専利ライセンス開放声明を公告するか否かに関する国家知識産権局の決定は行政再議の範囲に属していない。
● 実用新案の審査に明らかに進歩性を有しているかどうかの審査が導入
2024年1月20日より施行された「中華人民共和国専利法実施細則」は、実用新案の審査に明らかに進歩性を有しているかどうかの審査を導入し、これに併せて「専利審査指南」も改正されました。
改正後の「中華人民共和国専利法実施細則」の第50条に、「専利法第34条と第40条に言う予備審査とは、専利出願が専利法第26条又は第27条に規定する書類とその他の必要な書類を具備しているか、これらの書類が規定の書式に合致しているかを指し、さらに、実用新案出願が専利法第5条(不特許事由)、第25条(不特許事由)に規定される状況に明らかに属しているか、専利法第17条、第18条第1項、第19条第1項又は本細則第11条、第19条~第22条、第24条~第26条の規定に合致していないかどうか、専利法第2条第3項(実用新案の定義)、第22条(新規性、進歩性、実用性)、第26条第3項(明確性要件)、第4項(サポート要件)、第31条第1項(単一性要件)、第33条(補正時の新規事項追加の禁止)又は本細則第23条、第49条第1項の規定に明らかに合致していないかどうか、専利法第9条(ダブルパテント)の規定に基づいて実用新案権を取得できないかどうかを審査する」ことが記載されています。
改正後の「専利審査指南」の第一部分第二章「11. 専利法22条2項と3項に基づいた審査」に、「方式審査において審査官は実用新案が明らかに新規性及び進歩性を有しているかどうかを審査する。審査官は、取得した先行技術又は抵触出願に関わる情報に基づき、実用新案が明らかに新規性を具備しないものかを判断して良いとする。新規性に関する審査は本指南第二部分第三章第3節の規定に参照する。新規性に関する審査は本指南第二部分第三章第3節の規定に参照する。進歩性に関する審査は本指南第四部分第六章第4節の規定に参照する」ことが記載されています。
● 中日特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムが延長
中国国家知識産権局と日本特許庁の共同決定によると、中日PPH試行プログラムは、2023年11月1日から2028年10月31日まで延長されました。本試行プログラムに参加する要求及びプロセスは、引き続き中日PPH指南に従います。
PPHは異なる国や地域間の特許審査ハイウェイであり、特許審査機関間のワークシェアリングを通じて特許審査プロセスを加速させます。2011年11月に開始された最初のPPH試行プログラムから、国家知識産権局は既に31の国や地域の特許審査機関とPPH協定を締結してきました。
● 2023年中国知的財産権統計概要が公布
2023年中国知的財産権の主な統計データは下記の通りです。
1、専利について
2023年、中国の特許登録件数は92.1万件であり、実用新案登録件数は209万件であり、意匠登録件数は63.8万件でした。
2023年末時点において、中国での有効な特許の件数は499.1万件であり、そのうち、国内(香港、マカオ、台湾を除く)の有効な特許の件数は401.5万件でした。有効な実用新案の件数は1212.9万件であり、有効な意匠の件数は323.4万件でした。
2023年、中国国家知識産権局は、PCT国際出願を7.38万件受理し、そのうち、中国国内出願人による出願は6.88万件でした。
2023年1月~11月に、中国出願人から1666件の意匠国際出願が提出されました。2023年末時点において、公開された1974件の意匠国際出願は、中国を指定しています。
2、商標について
2023年、中国の商標出願件数は718.8万件であり、商標登録件数は438.3万件でした。2023年末時点において、中国での有効な登録商標件数は4614.6万件でした。
2023年、中国国家知識産権局が受理した中国の出願人によるマドリッド制度を利用した商標の国際登録出願件数は6196件でした。
3、地理的表示及び集積回路配置設計について
2023年、国家知識産権局が認可した地理的表示保護製品は13個、団体商標・証明商標として登録された地理的表示は201件、地理的表示専用標識の使用が許可された経営主体の数は5662でした。
2023年末時点において、認可された地理的表示保護製品は累計で2508個、団体商標・証明商標として登録された地理的表示は累計で7277件、地理的表示専用標識の使用が許可された経営主体の数は累計で26398でした。
2023年、中国の集積回路レイアウト設計の登記申請件数は12503件で証書を発行された件数は11316件でした。